菅さん、今回は本気なんだろうか?
13日から日米TPP協議、正式発表
日米両政府は7日(日本時間8日)、全品目の関税の原則撤廃を目指す環太平洋連携協定(TPP)をめぐる初の2国間協議を1月13、14の両日、ワシントンで開くと正式発表した。最重要相手国の米国との協議が始まる。TPP参加の是非を検討している日本にとっては貴重な情報収集の場となりそうだ。
米側は通商代表部(USTR)のカトラー代表補が議長を務め、国務省などからも担当者が参加。日本側は外務省の八木毅経済局長が議長を務め、経済産業、農林水産両省の幹部も出席する。両政府は2日間にわたり「日米貿易フォーラム」を開催。中国が輸出割当量を削減しているレアアース(希土類)をめぐる連携強化策も話し合う。
ただ農業分野の関税撤廃や米国産牛肉の市場開放など日本の交渉参加の障害となる問題をめぐり、日米間で駆け引きが行われることも予想される。(共同)
個人的には、経済のグローバル化がここまで進んでしまうと、国際競争に勝ち残るためにはTPPに加盟するほかないんじゃないかと思う。
TPPのもとでは加盟国間で農産物や工業製品の関税が原則撤廃される。そのため輸出製品に関しては価格競争力が増すわけだが、日本がこれに加盟しない場合、電機や自動車などの輸出の主力産業で苦戦を強いられることになるだろう。ライバルである韓国はアメリカをはじめとした国々とすでに自由化交渉を進めているといわれている。海外交易で食っている国なんだからこれは大いに痛手になる。逆に日本がこれに加盟すれば、関税撤廃による価格競争力の強化で世界シェアの増大につながるだろう。また国内産業を見ても、原材料費の低下によって消費者にもメリットは大きい。
問題となっているのは農業だ。
「農業生産の縮小で食品加工産業は仕事の無い日本を離れ、国内総生産の7兆9000億が吹き飛び、340万人が失業する」
これはTPPの加盟によって農業崩壊のシナリオを描く農水省の主張だが、数十年前の日米貿易摩擦の時と言っていることがあまり変わらない。お前らは今まで一体何をやっていたんだ。
日本を一つの企業と捉えた場合、農業は不採算部門のようなものだ。平成20年の日本の農家の総産出額が8兆4000億だったのに対して、パナソニックが予想する平成23年3月期の連結売上高は8兆9000億。しかも農業就労人口が約260万人なのに対してパナソニックグループの従業員数は約38万人。6倍以上の就労人口を抱えておきながら産出額が1企業の売上高にも及ばない。これが日本農業界の現実だ。
しかし農業が利益を上げられないのは宿命などではない。効率性がひどく悪いからだ。経済同友会の試算によると農業所得のみで時給換算した場合、作付面積3〜5ヘクタールの稲作農家だと時給2000円と利益が出ているのに対し、0.5ヘクタールの農家だとマイナス100円と赤字に転落する。平成20年の日本の平均所得(547万5000円)を上回る事が出来るのは10ヘクタール以上の農家に止まる、とのことなんだが、大半の農家の作付面積は1ヘクタール以下だ。これでは採算は取れない。実際こんな状態でやっていけるのは兼業農家だからで、転売目的のキャピタルゲイン待ちの農家もいるようだ。これだと農業の収益性が上がらないのは当然だ。今すぐにでも農地を集約して大規模専業農家で生産を行う構造を作るべきだ。
これに対して、農地集約を行って産業的農業を展開しても途上国で生産される作物より安くはできないから無駄だ、と指摘する人がいるかもしれない。確かに価格では負けるだろうが、ではそういう人は価格だけで食品を購入しているんだろうか?
アジアや欧米にコメを輸出しているJA秋田おばこ(秋田県大仙市)では契約農家を当初の4軒から80軒に増やし、生産量も前年の2.5倍にあたる770トンに拡大した。なぜか?当然売れているからだ。もっと安いコメはよそを探せばいくらでもあるのになぜ売れているのか?それは消費者が価格だけで商品を選ぶわけではないからだろう。味や品質の面から見て、日本の農作物は世界でも十分勝負できる。
農業界からはTPP加盟によって農業崩壊を危惧する声は聞かれても、収益性の改善のために構造改革を求める声はほとんど聞かれない。長年の保護農政のおかげですっかり「萎えた」と見える。
食料自給率の低下を理由に加盟反対を唱えているが、生産効率や品質維持・向上などの改善で国際競争力が増せば、それだけ国内でも勝負できるわけだから食料自給率の向上にもつながるし、日本が農作物を主要な輸出商品とする生産体制が整えば、おそらく将来やってくるであろう食料危機にも対応できる潜在力を備えることにもつながる。これは言い訳にはならない。
そもそも減反を行って米価を高く調整することでようやく農家の収入を安定させているのが現実なんだ。つまり生産量を減らして収入を維持しているわけだが、これが異常な事態だとわからないのか?こんな歪んだ構造がいつまでも続くわけがないだろうが。早晩沈んでしまう泥船に乗っていながらまだ甘えるつもりなのか?
やる気がないんだったら専業指向農家に農地を売って、さっさと退場していただきたい。
「経営の神様」と呼ばれたP.F.ドラッカーは著書『経営者の条件』に以下のように書いている。
長年の間、アメリカ農務省は、根本的に相容れない2つの価値観に身を裂かれてきた。その一つが農業の生産性の向上であり、もう一つが国のバックボーンとしての家族的農場の維持だった。前者が目指すものは、高度に機械化された大規模事業としての産業的農業だった。後者の目指すものは、保護された非生産的な農民による郷愁的な農村だった。
少なくともごく最近まで、アメリカの農政はこれら2つの価値への取り組みの間で揺れ動いてきた。その結果残ったものは膨大な支出だった。
何か今の日本を指摘しているように感じるのは自分だけだろうか?加盟反対の意見には、農村における古来のコミュニティのあり方を維持したいという願望が根底にあるのかもしれない。
農水関係者が主張している主な加盟反対理由には対応策がある。しかし農産物の自由化を認めればかつての郷愁的農村は維持できない。古来より日本人を育んできた農村文化の(あの郷愁的な)香りが失われることを、むしろ個人的には気がかりに思う。
【参考】
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【問われる開国−TPPの衝撃】(上)生き残れるか、食料争奪戦 日本企業に求められる「戦える素地」・
【問われる開国−TPPの衝撃】(中) 利益を生む「構造改革」・
【問われる開国−TPPの衝撃】(下) 農業戦略、産業界にも責任